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第2回(2022年3月9日)

2022年度 公立高校入試の簡易分析

新型コロナウイルスの感染拡大から早3回目の公立高校入試。一部の学校では今日も個性重視の特別試験が行われますが、 学力検査については 昨日が今年度最後の試験でした。

なかなか記録として残すことも少ないですが、今年は 実際に問題を解きながら分析していきます。

なお、学力検査問題は 今朝の朝刊(西日本・朝日・毎日など)や県庁HPで確認することができます。
※県庁HPは、著作権関係で国語・社会は4月以降の公表となります
それ以外の方法で確認したい場合は、個別にご相談ください。

国語

昨年度と同じく4問構成でした。全体の難易度は平年並みかと思います。
国語は課題作文があるので、大問の途中でも 残り時間を見ながら調整していく必要があります。

[大問1] 説明的文章(評論)
おおよそ問われていることの周辺を読めば答えにたどり着くものが多いですが、問五の(2)は本文を幅広く読まないと答えにくいです。難易度は例年と同じくらいだと思います。

[大問2] 文学的文章(小説)・国語の特質に関する事項
ここ数年続いている小説からの出題です。登場人物の心情の変化を読み取ることができれば、それほど難しいものはありません。
(2)は、見開きにある資料だけでなく 本文の一部とも関連付けて答える問題(問一)が新傾向です。読むべきものが多くなるものの 落ち着いて解けば答えやすいので、焦りそうになったら一呼吸を置くようにしましょう。

[大問3] 古典
今年も近年と同じく現代語訳付きですが、新傾向としては古文・漢文が同時に出題されたことです。漢文はすべて書き下し分になっていて 内容が古文とリンクしているので、現代語訳と見比べながら読み進めれることで理解しやすくなるかと思います。
とはいえ、内容をある程度把握できても それを言葉にするのが難しいこともあり、問五の正答率は低いほうかなと思います。

[大問4] 作文
作文の段落構成・行数は例年と変わっていませんが、指定条件が少し難しく 文章にするのが難しいかもしれません。
限られた時間で答えないといけないため 構成を考えるのも大変ですが、第二段落の条件も踏まえてどちらを選ぶか決めて、 矛盾のないような流れを作ってから書き始めることが大切です。

数学

ここ数年増えていた記述式の解答が大きく減り、図形の証明とデータの活用の説明のみとなりました。
今年の問題は得意・不得意で差が付きやすく、特に難関校志願者はかなり平均点が高くなると予想されます。

[大問1] 小問集合
ここ10年近く続く9問構成です。
難易度も平年並みですが、現中学3年生から新しく加わった「累積相対度数」からの出題がありました。 また、3年前に復活した関数の作図も続いており、来年も問われる可能性が十分にあります。

[大問2] データの活用
こちらも現中学3年生から加わった箱ひげ図からの出題です。 個人的には1年前から 何らかの形で箱ひげ図が問われると思っていましたが、大問丸ごとで問われるとは思っておらず 驚きでした。
図の読み方、用語ともにきちんと覚えていないと答えられず、受検前に復習していなかった生徒はここだけで6点を失うことになります。 ここ数年、福岡県の公立高校入試は統計分野の出題が重要視される?傾向にあり、来年以降の受検生も 確実に得点源になるようにしてもらいたいです。
特に現中学1年生以下の生徒は、小学6年生のときに「中央値」「平均値」「最頻値」などの言葉を習うので、 そこが曖昧な場合は早めに復習してください。

[大問3] 文字式
具体的な数字がほとんどなく 記号ばかりで考える必要があるので、かなり解きにくいかと思います。 特に(2)のXとYは間違いやすいポイントがいくつもあるので 注意して解く必要があります。
この大問は教科書レベルの知識で 十分に答えられるので、普段の授業でいかに定着させられるかがカギとなります。

[大問4] 関数
4年ぶりに記述式の問いがありませんでした。 (1)と(2)は ここ数年の中では比較的答えやすく、できれば得点してもらいたいところです。
福岡県は放物線を交えた題材の出題が少なく ほとんどが中2までの知識で答えることができるので、 関数が得意な生徒は早めに過去問演習を始めて、苦手な人も できるだけ早く克服することをお勧めします。
※関数は高校入試を乗り切っても 入学後にさらに難しいものが出てくるので、逃れることはできません…

[大問5] 平面図形
かなり想定外ですが、2年連続で合同の証明を問う問題が出題されました。
少なくとも平成に入って以来30年で以上 全体の8割は相似な図形を問う問題で、合同の証明が2年連続出るのは今回が初めてです。 内容的にそれほど難しくないため 落ち着いて解けば問題ないですが、来年度以降も どちらが問われても良いように対策する必要があります。

[大問6] 空間図形
(1)は全員正解したいところです。(2)は最短距離を求める問題かと思いきや、さらにその先を問うものでした。
(2)・(3)は、中堅以上の高校を目指すなら解いてほしいですが、それより下の高校を目指す場合は 捨て問になるかと思います。

社会

難易度は平年とあまり変わらないくらいかと思います。特に地理と公民は資料が多いので、単純な知識問題だけでなく資料解釈の能力を問うものも多いです。
また、両解・全解となる問題が全体の半分くらいあるため、単純な知識の丸暗記は通用しません。

[大問1・2] 歴史的分野
全体的に時代の流れと知識を問うものが多く、(自分も含めて)歴史が苦手な受検生にとっては 難しかったと思います。
普段の授業から用語や出来事を単発で覚えるのではなく、前後関係や関連事項を絡めて覚えるようにすることで、 よりしっかりと答えられるようになるのではないかと思います。

[大問3・4] 地理的分野
世界地理では、年度によりますが1枚の世界地図になっている年と 今回のようにバラバラになっている年があり、 いずれにしても大陸の大まかな位置や 有名な経線・緯線(赤道・本初子午線・日付変更線)との位置関係は 確実に答えられる必要があります。
今年は農業・工業が中心の問になっていましたが、雨温図や時差についても 確認しておきたいところです。
日本地理も世界地理も同じですが、単純な知識を聞く問いは ほぼなくて、資料から読み取れる情報をもとに答えるものが多いです。
少なくとも日本の地方(7〜8分割したもの)の分布や それぞれの地域ごとのおおよその特徴、雨温図については頭に入れておきたいです。

[大問5] 公民的分野
国会・選挙・税など、さまざまな範囲から問われています。問6の国連についての問いは、昨年度は全国一斉休校に伴う措置で出題範囲から除外された内容でした。
司法・立法・行政や、企業・政府・家計など、三者・四者間の関係性を問う出題も多いので、それらの一つひとつについても丸暗記するのではなく なぜそのような形になるのかを考えながら理解を深めていくと良いかなと思います。

[大問6] 総合
今年度の出題は 背景知識を知っておいたほうが答えやすいものの、資料を見てまとめることで おおよそ答えられるものでした。
大問6は例年 資料読み取りが中心になるので、与えられた資料をしっかり見比べながら、最適な答えを導いてください。

理科

社会と同様に、出題傾向や出題数は例年通りと思われます。近年は感染症対策で実験ができないことも多いかと思うので、 いかに座学の授業で理解を深められるかが重要になります。

[大問1・2] 生物分野
被子植物・裸子植物の共通点と異なる点や種子植物について、またデンプンの対照実験・消化器官について出題されました。
いずれも教科書レベルの内容を抑えていれば容易に答えられたと思いますが、詳細まで理解できていないと得点が難しいものもありました。

[大問3・4] 化学分野
化学変化と質量保存、ダニエル電池について出題されました。
前者の問1は化学式を覚えていないと答えられず、手が出せない人も一定数いたかと思われます。
後者のダニエル電池もそれ自体の出題頻度が少ないため 苦戦してた生徒も少なくないと思いますが、4年前にも備長炭電池が出題されているので 化学電池についても確認しておいたほうが良いかと思います。

[大問5・6] 地学分野
天気と天体からの出題で、透明半球を使った実験(大問6)は数年おきに問われますが、露点を調べる実験(大問5の問1)は7年ぶり、乾湿計を用いた計算は10年ぶりの出題でした。 計算系の問題はとっつきにくいところもありますが、公式を覚えていなくても 単位から推測して計算することもできます。
なお、大問6の問3(2)は平成30年度に まったく同じ問いがあるので、近年の過去問は復習しておくことをお勧めします。

[大問7・8] 物理分野
光の反射と屈折、圧力についての出題でした。 特に圧力は現中学3年生から中2の地学・中3の物理などで分散して学習しているため、知識の定着が難しかったかもしれません。
今年は3年に2回くらいの高頻度で出る電気分野の出題がなかったので、来年度は ほぼ確実に電気分野からしゅつだいされます。

英語

英語の出題構成なども ほぼ例年通りですが、昨年度に続いて記号形式の出題が多いです。

[リスニングテスト]
※リスニングスクリプトをもとに、後日記載します。

[大問1] 場面にふさわしい表現(対話小問)
例年通り4題構成で、短い対話の穴埋めをするものでした。
英語でも、今年度から新たに学習することとなった「仮定法」を使った文章が出題されました(Dの選択肢ア)。

[大問2] 対話文
昨年度と同じく、並び替えの問い以外はすべて記号問題でした。
4択なので、ある意味 当てずっぽうで正解することもできますが、しっかり考えて解こうとすると2択で迷うものもあり、確実に正解を目指すと それなりに難しいです。

[大問3] 長文
こちらも問いの形式は昨年度とほぼ同じです。問4は質問の意味が分かってもそれに対する自分の答えを表現するのが難しい場合があり、 習った単語のうち答えとして矛盾しない(不自然でない)文章にするために、基礎となる単語の知識が必要になります。

[大問4] 英作文
今年も30語指定で、2つの意見から自分が考えるものを選んで答えるものでした。
国語の作文の同じく(英作文としては ここ数年続いていますが)自分が選ばなかったほうの案に触れながら考えを書く必要があるので、 早い段階から英作文の練習をして 表現力を鍛えていく必要があります。

全体を通して…

今年の検査問題を全体的に振り返り、難易度としては数学・英語がやや易(といっても それほど大きな差はない)、そのほかは平年並みかなと思いました。
大問の中で問われる単元の変化は 毎年少しずつあるので、それらも予想される範囲内だったかと思います。

来年度以降の受検生についても、まずは普段の学習でできるだけ基礎をおさえていき、少なくとも教科書やワーク等の練習問題が ある程度答えられるようにしておきたいです。
もちろん、公立高校への受検や進学だけがすべての道ではないので、特に来年度の中学3年生、すなわち現中学2年生についても 早い段階から進路希望や学力についてのヒアリングを行って、それぞれの希望に沿った進め方を 模索していきたいと思います。